内視鏡外科手術センター顧問 長谷川 洋
内視鏡外科手術(腹腔鏡手術)がわが国で初めて行われたのは1990年とまだ比較的最近のことです。
当院では1991年という早い時期からこの手術に取り組んできました。
現在は、胆石症、総胆管結石症、大腸癌、胃癌、鼠径ヘルニアなどを中心として、適応となる疾患には積極的に内視鏡手術を行うようにしています。
以前はこの手術の対象となる疾患や臓器はかなり限定されていましたが、最近はその適応はますます拡大しつつあり、今まで不可能とされた膵臓、肝臓などの疾患に対しても試みられるようになってきています。
将来的にはこの手術が外科手術の主流になっていくことは間違いないと思われます。
そのため、当院ではより安全で確実な内視鏡外科手術を提供できる体制作りが必要であると考え、2014年4月に内視鏡外科手術センターを開設いたしました。
この手術では、従来の開腹手術のような大きな切開を加えることはありません。
この手術は、モニターの画面に映し出された映像を見ながら、さまざまな細径の機器(鉗子など)を操作して手術を行います。
そのため、体表につく傷は5-10mmの小さな穴が数か所と小さな切開創のみとなります。
この手術の良い点としては、傷が小さいので整容性(美容的)に優れていること、術後の痛みが少ないことなどがあげられます。
そのため、低侵襲な手術(体にやさしい手術)と評価されています。
わが国では高齢化が進行し、手術を受ける必要のある高齢者がますます増加しています。
こういった高齢の方に対しても、早期に離床が可能で、術後の合併症が少ないこの手術は安心して受けて頂くことができます。
また、もう一つの良い点は、手術の操作部位を拡大視して見ることができるので、細かい神経を温存するなどのより精密な手術ができることがあげられます。
このように利点の多い手術ですが、欠点が無いわけではありません。
最も大きな問題点は、手術に際して従来の開腹手術とは全く違った感覚が必要となり、技術的に難しいことがあげられます。
そのため、この手術を安全に行うためには特別のトレーニングを受ける必要があります。
日本内視鏡外科学会では、「技術認定制度」を立ち上げ、指導的な立場でこの手術を行うことができる医師を認定するための試験を行っています。
合格率は30-40%であり、大変難しい試験です。
当院では、この資格を有する医師(技術認定医)が3名おり、安全な手術を提供できる体制が確立しています。
今後とも安全、確実な内視鏡外科手術を行うように努力して行きたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。